行政書士 EIL国際法務事務所
EIL Consulting Office
行政書士の業務
■行政書士とは:
行政書士の業務については行政書士法で定められており、業務内容については第1条の二、三に規定されています。
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、以下の書類を作成できます。
● 官公署に提出する書類
● 権利義務又は事実証明に関する書類
上記のほか、次に掲げる事務を業とすることができます。
● 許認可等に関して行われる聴聞
弁明の機会の付与の手続
意見陳述のための手続
において当該官公署に対してする行為について代理すること。
● 契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
● 行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
第19条で、行政書士でない者は、業として上記の業務を行うことができないとなっています。行った場合には第21条2号により1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
ただし、他の士業の独占業務である場合には行うことができません。
例えば、遺産分割の場合、遺産分割協議が終わっている状態(争いのない状態で、手続きだけの問題)であれば、遺産分割に関する書類の作成(財産目録、相続関係図、遺産分割協議書などの作成やそれを元にして金融機関に名義変更の届出等)や、それら書類作成に関する相談はできますが、遺産分割の争いに関する法律相談はできません。法的紛争性を帯びたものに関与することは弁護士さんの仕事となります。最初に遺産分割協議が整ったとして受任したにも関わらず、途中から相続者同士で相続内容に関して紛糾してくること(長男だからといって兄が多いのは不公平だとか、私が一番面倒をみたのだから寄与分の割り増しをしてほしいなどの主張が起こってくること)がありますが、この場合は、遺産分割の争いが起こった時点で、それまでの費用の清算をし、辞任となります。また、遺産分割が土地建物に及んだ場合、土地建物の分筆、名義変更などは法務局に提出して登記を受ける原因書類に該当するため、司法書士さんの業務になり、行政書士ではお受けできません。この場合実際には、辞任するというよりは、登記変更手続きだけを連携司法書士さんにお願いすることで、トータルな遺産分割作業を受託する行政書士さんが多いと思いますので、一々お客様が司法書士さんを探すということは不要だと思います。家を買われた時も不動産屋さんとの付き合いしかないですが、不動産屋さんの連携司法書士さんが登記をしてくれますよね。そんな感じです。でも、委託料の中の実費に司法書士さんに関する代金が必要ですので、ご承知おきください。
長々と例外を述べましたが、行政書士は裁判所、法務局等には提出できませんが、都道府県庁、市区町村役所、警察や経済産業省などの官公署への書類提出はできます。
代理人としては、契約書類の代理作成はできますが、訴訟の代理人、交渉の代理人など法律行為の代理人になることはできません。
また、税理士、公認会計士、社会保険労務士等の範囲の仕事もお受けすることはできません。
入国管理局に対する業務では行政書士が申請を行うことにより、本人が入国管理局に出頭することを免れますが、これは行政書士が入国管理官の代わりに本人と会い、各種申請内容を直接確認することにより省略が可能となるもので、本人の代理人ではありません。申請を取り次ぐだけです。代理人というのは依頼者から申請に関する一切の権限を与えられ、あとは自己の権限で行うというものですで、例えば日本に居住する外国人の子供に対する親が子供の代理人に当たります。子供の代わりに判断をすることが許されます。取次は、代理人ではないので、自分で判断はできません。但し、外国人が申請書を正しく書けない場合が多いので、事実関係を確認しながら代わりに書いてあげ、申請するというものです。第3者からの依頼や、代理人(親など)だけで本人(子供など)に会えない場合は受託できません。確認するための書類や申請するための資料が不備な場合も受託できません。
この他、行政書士ではできない分野がありますので、ご依頼をすべてお受けすることができない場合があります。ご承知おきください。
■ 所轄官庁
行政書士 ー 総務省
弁護士、司法書士 − 法務省
公認会計士、税理士 − 財務省
弁理士 − 特許庁(経済産業省)
社会保険労務士 − 労働基準監督署(厚生労働省)
なので、法務省、財務省、特許庁、労働基準監督署は行政書士の範囲外になりますが、それ以外の官公庁は全て行政書士のテリトリーとなります。
昔、地方自治体が自治省管轄であったので、地方自治体は全て行政書士が事務を行えます。
社会保険労務士は行政書士から分化したものなので、社会保険労務士制度ができる前に行政書士であった者は、今でも社会保険労務士の業務ができます。
余談ですが、弁理士は特許庁管轄の事務ができますので、特許、商標、意匠登録、実用新案に関して申請等の事務ができますが、著作権は文部科学省の文化庁管轄ですので、弁理士試験には著作権は出ません。
尚、弁護士は法律家なので、法の解釈を論じられます。どういうことかというと、行政を含めた相手方ともめた場合には、法令文を解釈して、決着を図るということが行えます。
しかしながら、行政書士は法務省管轄ではないので、法的にもめた場面には立ち入ることはできません。役割としては、相手側ともめないように書類を作成し、手続きを行うことに有ります。そのため、法律でどのように規定されているかより、その役所ごとのルールに則って、書類を作成し、許認可してもらうことになります。
同じことを行う場合でも、役所によって使用しているフォーマットが異なっていたり、記入方法が異なっていたりします。それを、「xx市役所ではこうだった」とか、「法律にこう書いてある」と論じるのは役割を分かっていない人の言い分です。その役所で使用されている取扱実務や事務要綱などを見せてもらったりして、スムーズに事を運ぶ役割があるということです。
一々役所の方が申請者全員に書き方を教えていれば、人間の数および時間が膨大に必要になりますが、複雑な手続きを行政書士が代行すれば、役所の負担が減ります。
その事務手続きを必要とする申請者が自分のお金で行政書士に依頼して、行政を軽くし、減税に持って行くのが正しいのか、申請の必要のない人までもが負担した税金で説明する人や窓口(土地代に相当)を多大に増やし、税金や役所を巨大化するのが正しいのかを考えると、今の行政は市民に優しすぎて、税金をたくさん使い過ぎる結果になっているなと思います。
こうした経緯から、コンサルタント業や契約書の作成などの、もめごとになる前の事務作業は行政書士が行えます。
最近では地方自治体の窓口の人間はアウトソースしていますが、知識、秘密保持等の問題からすると、行政書士の資格を持った者にアウトソースすべきかと思います。
■ 証明機関と検査機関
行政書士は書類を作成する機関であり、証明機関です。元々は自治省(現在の総務省)の管轄で、官公署の決まりを熟知して、官公庁の意図通りに書類を作成することにあります。官公庁の書類は慣れてしまえば簡単でも、初めてでは書類の記載が複雑怪奇で有ったり、添付事項に不備が多く、官公庁の職員に無駄な時間を取らせるため、一回で受け取ってもらえる書類を作成することにありました。よって、一義的には書類の作成ですが、作成した書類は、お客様の言い分を書類化することにあり、内容を保証するものではありません。記載する内容は全て依頼者からの提供が必要です。
例えば、食品を輸出する場合に輸出先各国で求められる食品中の放射性物質の証明書に関しては、厚生労働省の登録検査機関、国際試験所認定協力機構(ILAC)等の認定機関などが測定し、データを作成します。輸出される製品が日本製で有るかどうかは、お客様がその食品等が問題なく日本で生産、加工されたのかを宣言してもらいます。その内容を申請書に転記して、地方農政局長に証明書の発行申請するということが行政書士の仕事で有り、農産物の放射性物質の量を測定したり、その食品の由来を自ら調査して回ることが証明ではありません。また農政局長にしてもその証明書に国際的に通用するための印を押すことで有り、裏取りをしてから印を押すことで証明しているわけではありません。
車庫証明にしても、ディーラーから出される新車の書類に基づき行います。行政書士自らがその新車のボンネットを開け、車体番号を確認したり、車検書の通りであるか車検をするわけではありません。保管場所についても所有者となる者の土地の所有者やマンションの管理組合が発行したものをうのみにするわけです。よって、行政書士が作成した書類は事実証明に関する書類であって、検査機関ではありません。よって、検査機関のように内容を証明する機関ではないということを理解してください。また、車庫証明、新車登録などの書類の作成、提出ができるのは行政書士か、新車を購入する本人のみです。ディーラーは他人の車を登録するので、行うことはできません。
貿易関係書類については、日本商工会議所および各地方商工会議所が貿易証明を出していますが、これは商工会議所法(世界的に同様な法律がある)に基づく証明であり、当方は商工会議所の代わりになることはできませんが、お客様が作成した書類が却下や再提出とならないように商工会議所に提出する書類の作成およびチェックをします。その場合においても拠点となるのはお客様のINVOICE、PACKINGLISTおよび誓約書であり、本当にそれが静岡県で生産され、福島県産ではないのかを調べるわけではありません。お客様が福島県産の芋を静岡県産という誓約書を書いてきて、その内容から疑義がないと判断した場合、当方は静岡産であると証明し、農水局や商工会議所も静岡県産ということで公印を押します。後から虚偽申請で有ったとなれば、警察が立証し(裏取りを行う)、各法令に基づきお客様が処罰を受けることになります。行政書士はお客様と共謀していた場合以外は責任が及びません。
商工会議所においても、「申請内容の立証責任は申請者に存する」としており、証明とはお客様の言い分が証明書に記載した通りであるということです。これが証明機関の役割です。行政書士も同様に証明機関です。裏取りをして内容が正しいということを証明するのが証明機関と勘違いしている方がいるようですが、行政書士など証明機関の作成した書類は内容がお客様の主張通りであることが疑義がないことを証明するということであり、その内容について責任を持つものではありません。
似たような事例で、中古工作機械の位置決め精度検査があります。これも位置決め検査において精度検査が行われていないものは該非判定のしようがありません。精度検査は検査機関でなければ行えないので、一般財団法人機械振興協会にお客様が検査依頼をしてもらうことになります。この検査結果データを当方にお出しいただき、当方が該非判定をするという手順になります。検査機関はデータを取りますが、これは工作機械の位置決め精度に関する項目のみの判定であり、工作機械は用途や他の部品(例えば搭載されている電子計算機など)も判定しなければならず、検査機関が該非判定を正しくすることはできません。よって、位置決め精度、電子計算機の仕様、用途、弁、ポンプなど他の要素を含めて総合的に判定し、該非判定書を作成するということになります。よって、データが出てこない場合に実機を測定することはありますが、基本的には依頼者が提出した書類に基づいて判定するということになります。該非判定に必要なデータの提出は依頼者の義務になります。
電気用品安全法(PSE)の特定電気用品においては、コンサルティングを行うことは誰にでもできますが、その適合性検査は経済産業省登録検査機関(世界で数社)でしか行うことはできません。しかし、製造業者と輸入業者以外のものがその書類を作成することおよび届出をすることは違法です。経済産業省の製品安全室の中で「その書類、行政書士が作成していなければ違法です」のポスターが貼ってあるのを見たことがあるでしょう。公的検査機関であっても、検査をすることはできますが、その検査記録を基にコンサルティングをすること、PSEの届出書類を作成することや届出をすることはできません。逆に、行政書士が特定電気用品の適合性検査を行うこともできません。
また、ISO/IEC/JIS17065により国際的に、検査機関はコンサルティングを禁止していますので、検査後の指導などは出来ないことになっています。よって、検査機関が出した検査結果(データ)の活用は、検査機関においては、当方のような結果に基づくコンサルティング業務および書類の作成、申請は行えません。
「JIS Q 17065
4.2.6 認証機関,並びに認証機関が属する同じ法人及び認証機関の組織統制(organizational control)(7.6.4参照)の下にある法人のいかなる部門も,
次の事項を行ってはならない.
a)認証された製品の設計,製造,据付け,流通又は保守
b)認証されたプロセスの設計,実施,運用又は維持
c)認証されたサービスの設計,実施,提供又は維持
d)依頼者へのコンサルティング(3.2 参照)の申出又は提供
。。。」
検査かできなければ書類は書けないはずとか、検査機関が公的書類を書けないのはおかしいという方もいますが、検査機関は検査した結果はこうでしたと内容の証明は出来ますが、あくまでも検査した結果(データ)を示すまでです。検査していない部分まで証明することはできませんし、コンサルティングなど指導をすることもできないのです。
■ 当事者と第三者
当事者(本人)と第三者の区別が付いていない人もいますが、輸入する場合は、輸入者、乙仲、輸入代行業者などが当事者であり、輸入の各段階において責任分担が異なります。例えば、PSE(電気用品安全法)に該当する製品の場合、新製品を開発するために、輸入し、社内で実験をする場合には、自己責任において行うため、PSEの対象ではないので、届出も必要ありません。しかしながら、社外モニターを公募し、体験してもらい、その結果に応じて量産までに修正をかけたい場合、社外モニターは第三者ですので、PSEの安全性検査において確認し、届出を済ませる必要があります。輸入代行者は実際に当該製品を輸入していますが、その製品は実質上の輸入者である販売者に依頼されて輸入しただけですので、届出も安全性確認義務もありません。乙仲も輸入に従事していますし、税関に対し様々な義務を生じますが、製品の安全性についての義務は負いません。
輸出する場合においても同様です。輸出者は相手側の国の法令に合致させる義務があり、日本の法令に合致させる義務もあります。乙仲は輸出するだけであり、その製品が相手国の電波法違反であるかどうか、食品安全法違反で有るかどうかは調べる必要もありません。
しかし、乙仲および輸出者は税関の輸出品目表の提出書類に基づき、輸出令別表第1、化学品、美術品などにおいては別表第2についても該非判定し、提出しなければなりません。また、宛先もヘッダーで東京税関成田航空貨物出張所長殿などとし、非該当である旨の宣言をしなければ受理されないので、税関に見せる書類であり、提出する書類ではないというのは詭弁です。
そして、該非判定書の作成義務者は輸出者です。輸出者が自ら作成することになりますが、作成できない場合には、作成の典拠としてメーカーからもらうこと、第三者に依頼することはできます。それを基に輸出者自らが作成しなければなりませんが、税関は正しく判定したものであれば、誰が作成したものでも受け取りますので、非該当証明の依頼をして受領したものをそのまま提出してしまう人が多くいます。
メーカーは当事者です。その貨物を設計し、製造した張本人で有ります。車庫証明の例にもありますが、車庫の使用権を証明する地主やマンションの管理組合がメーカーの非該当証明に当たります。当然発行料を取りますし、その書類は官公署に提出できます。これは土地の場合は持ち主で有り、貨物の非該当証明の場合は設計・製造者であるので、内容の証明になります。内容の証明は当事者にしかできません。書いている内容が自らがその当人として真実であることを宣言するものであり、内容の真偽についての責任もあります。そのため、非該当証明を発行しないメーカーも数多くあります。また、中古品は改造されていたり、どのようなオプション品が付いているのかわからないため、構成が変わっていたり1台ごとに状態が異なりますので、中古品に対しては非該当証明書を発行しないメーカーが殆どです。
輸出者は当事者です。輸出者が作成した非該当証明書は内容の証明になります。自らがこの内容が正しいと宣言するものです。輸出者がその内容について理解しているか否かに関わらず、その内容が虚偽であっても、内容の証明になります。輸出者が商社の場合、内容を分解したこともなく、搭載されている部品について知らなかったということもあります。そうであったとしても輸出者が作成した以上、内容を証明していることになります。内容の真偽についての責任もあります。
行政書士は第三者です。行政書士の作成する非該当証明は、典拠となる輸出者の提出した仕様から、このように判定することが合理的であるという仕様を非該当証明という形式に文書化したものです。印鑑証明に記載している印は確かに私の持っている印に間違いないと契約書の氏名と印鑑証明の氏名、所有する印と本人の関連付けを証明するのが内容の証明であり、当事者の登録した印と印鑑証明の印は同一であると証明するのが証明機関の証明であるという違いになります。証明機関は押された契約書の内容や契約に使用された印、契約者の氏名を証明することはありません。典拠となる仕様書が間違っている場合には間違った非該当証明書が作成されますが、その真偽の責任は仕様を提出した依頼者側にあり、作成者である行政書士にはありません。このように税関に提出することを目的として、内容の証明ができるメーカーや輸出者以外の者(第三者)が非該当証明書を作成するのは、他人のための証明書の作成となり、行政書士でなければ違法となります。
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